ユニクロ「世界で賃金統一」人材確保狙い。この会社で働きたいと思うか…。
ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は、4月23日の朝日新聞で店長候補として採用した全世界で働く正社員すべてと役員の賃金体系を統一する「世界同一賃金」を導入する考えを明らかにしました。
海外で採用した社員も国内と同じ基準で評価し、成果が同じならば賃金も同水準にするというものです。
柳井氏は同紙のインタビューで、「同じ会社にいても、国が違うから賃金が低いというのは、グローバルに事業を展開しようとする企業ではあり得ない。『グローバル企業』だから、同じ能力・職務内容にはどの国でも同じ給料で報いる」と述べています。
しかし、ユニクロは発展途上国の安価な労働力を利用することで利益をあげ、現地の協力工場で働く労働者の賃金は低く、現地採用の正社員でも一般の社員はその国の所得に応じた給料で、幹部社員のみが先進国並みの高給で遇され、所得格差がより広がるという懸念があります。
そして「将来は、年収1億円か100万円に分かれて中間層が減っていく。仕事を通じて付加価値がつけられないと低賃金で働く途上国の人の賃金にフラット化するので、年収100万円のほうになっていくのは仕方がない」「グローバル経済と言うのは『Grow or Die』(成長か、さもなければ死か)。非常にエキサイティングな時代だ。変わらなければ死ぬ、と社員にもいっている」とも語っています。
斬新な考えに聞こえますが要は、仕事で付加価値がつけられなければ途上国の賃金水準まで賃金を引き下げるという「ブラック企業の考え」そのもので「世界同一賃金」に名を借りた労働条件の引き下げでしかありません。
同社の新卒社員が入社後3年以内に退職した割合(離職率)は2006年入社組が22%でしたが、07年は37%、さらに08〜10年は46〜53%と同期入社のおよそ半分が会社を去っていて、普通ではとても考えられる数字ではありません。
また、会社が決めた月間勤務時間の上限は残業も含めて計240時間で、これではとても仕事を消化できないという多くの社員の証言があり、このことからもサービス残業を強いているのは明らかです。
なぜ、この会社で働きたいと思うか…。
人により考え方の違いはありますが、おそらく自分なら「勝ち組になれる」この思いだけが原動力になっているのでしょう。
仮に勝ち組になれたとして、そのために家庭は顧みず、睡眠時間を削ってまでする価値がある仕事が「ユニクロ」にあるのか。外部の者の眼には見えてきません。
批判されるのを承知で言えば、たかが安売り衣料品の会社。ユニクロがなくなって困るかと言えば、決して困ることはありません。
「世界同一賃金」は同社の賃金体系、雇用形態の問題であり、グローバル化を目指す他の企業に波及するとは考えられません。
今回の発表で社員を酷使する「ブラック企業」の印象をより強めただけではないのか。今後の同社の動きから眼が離せません。
2013年05月01日