厚生労働省は生活保護費削減に難色。財務省と意見分かれる。

財務省は、生活保護費削減に向けて10月22日、食料品や光熱費などの「生活扶助費」を減らしたり、いまは無料の医療費の一部負担を求めたりする対策案を打ち出しました。
生活保護費は今年度予算で年3.7兆円になり、このうち約半分が受給者の医療費をすべて負担する「医療扶助費」、約3分の1が「生活扶助費」、約15%が家賃にあてる「住宅扶助費」として計算されています。
財務省案では、生活扶助費は物価が下がり続けるデフレを反映していないとして給付額のうち生活扶助費部分を4%ほど引き下げる。また、家賃の相場も下がっているとして住宅扶助費の引き下げも提案しています。
医療扶助費も「医療費無料」が受給者を増やす原因になっていると指摘し、医療機関にあまり行かないように促すため、一部を自己負担にするか、自己負担分を翌月以降に払い戻すことで、手元のお金が少なくなるのをおそれて医療機関に行くのをためらうのではとのねらいがあります。
確かに、生活保護受給者の生活費が受給していない低所得者を上回る「逆転」状態を是正する必要はわかりますし、これに異論を唱える人はいないはずです。
年金も前年の消費者物価指数に応じて年度ごとに改定される「物価スライド」が取り入れられており、生活扶助費だけが物価を反映せずに支給されているのは疑問視せざるをえません。
ただ、それ以外の削減策については財務省の案は納得しがたく、厚生労働省が生活保護費削減に難色を示しているのは当然のことだと思います。
例えば、平成22年度の保護世帯の構成割合は、高齢者世帯は42.8%、傷病・障害者世帯が33.0%を占めていて、この人たちに医療費の一部自己負担を求めることは「受診を抑制してしまう」ことは十分に考えられます。
また、翌月以降に一部負担金を払い戻す案も「手元のお金が少なくなるのをおそれて医療機関に行くのをためらうのでは」の考えも、稚拙な考えと言わざるをえません。
生活保護受給者は今年の6月で211万5千人で過去最高に達しています。なぜここまで増えてしまったのか。
削減も必要でしょうが、早急な取り組みは「本当に困っている人の生活を脅かし窮地に追い込む」ことになりかねません。
まずは受給者がここまで増えた理由を検証し、その対策を講じるのが先決ではないでしょうか。
地域別最低賃金が生活保護費を下回る地域は平成24年度において東京、神奈川をはじめいまだ6都道府県に及んでいます。
「アルバイトやパートなどで働くより生活保護を受けたほうが得」といったモラル・ハザード(倫理の欠如)も生じていて、働く意欲を低下させないためにもさらなる引き上げの検討も必要でしょう。
他方で、受給者も自活への自主努力や、医療機関での重複受診を控えること等が求められて然るべきだと思います。
モラル・ハザードの問題がある反面で、生活保護を受けるのを潔しとしないで申請をためらい、生活が成り行かなくなる。あるいは窓口で申請を断られ、相談する人もいない。このような人がいるのも事実です。
いまの時代に「餓死」など考えられないのに、電気が止められ、水道が止められ、そして…。そのような報道を何度も耳にします。
いままでに「coffee break」で生活保護のことを何度か取り上げましたが、そのたびに自分の無力を思いしらされています。
でも、これを読んでくださった方が「生活保護」について一瞬でも考えていただければ無駄ではない。そう思って、今回も書きました。

2012年11月01日